瞳 (2011)
空気には草粒 嗅覚風景に二人
一葉の反射板に 浮かび出る明暗の
その海の砂床を 手探るその一人も
次の鼓動ではホルモンの潮に押し上げられて
百億万の疑問符を 飴玉みたいに口に含んで
ころがして溶かして 飲み下してしまった
押し寄せる夕波 落幕風景に二人
停滞する千三百瓦を突き刺した
その一筋の夜風に 目が覚めてその一人は
彼と同じように霧雨に滲んだつま先を見た
青い鞄を引き摺って 「闇を飲むんだ。」と踵を浮かせた
瞳の花は咲くばかり 言葉は鳥になった